共有持分は売却可能!
売却方法や税金、トラブル時の対処方法を
解説
本記事では、共有持分の売却方法や売却時に発生する費用・税金、よくあるトラブルへの対処方法などを解説します。
共有持分とは
共有持分とは、1つの不動産を複数人で共有しているときの、各人が保有している権利の割合のことを指します。
例えば、親から相続した不動産を兄弟で共有名義にしていたり、二世帯住居の購入費用を親子で負担していたりする場合、それぞれが共有持分を所有しています。このように、相続や贈与、または不動産を複数人で共同購入した場合に共有持分が発生することが一般的です。
なお、共有持分は権利上の概念であり、共有者は保有割合に関係なく当該の不動産を利用できます。
共有持分は売却可能?
では、複数人で所有する共有持分の不動産は、自分1人のみで売却可能なのでしょうか?
共有持分のみであれば単独で売却可能
結論から言うと、自分が権利を持っている共有持分のみであれば単独で売却可能です。
ただし、不動産全体に対する法的行為については共有者の合意が必要なケースがあります。具体的には「変更行為」「管理行為」「保存行為」という3つの行為があり、それぞれの内容や同意の必要性は以下の通りです。
●変更行為・・・
共有物の形状や性質を改変する行為のこと。具体的には、建物の増改築や共有物の売買契約の締結とその解除がある。変更行為を実施するには、全員の同意が必要。
●管理行為・・・
共有物を利用・改良する行為。例として、共有物の賃貸借契約の締結とその解除、外壁塗装、温水便座の設置などが挙げられる。管理行為を行うには、共有持分のうち過半数の同意が必要。
●保存行為・・・
共有物の現状を維持する行為。共有物の修理や不法占拠者への明け渡し請求、所有権の保存登記などがある。保存行為は共有者それぞれが各自単独で行うため、単独で実施可能。
なお、共有物全体を売る場合は共有者全員の許可が必要となるため注意が必要です。
共有持分のみの売却は難しいという現実
共有持分には固定資産税がかかり、増改築には全員の同意が必要であることから、煩わしいと感じて売却したい方も多いのではないでしょうか?
共有持分のみであれば売却が可能ではあるものの、購入した第三者は「変更行為」や「管理行為」を行う際、赤の他人である他の共有者の許可を取りづらいため、単独の所有物件と比較すると売れにくい傾向があります。
つまり、共有持分の売却は法的には可能であるものの、現実的には容易ではないということです。
共有持分の売却方法
では、共有持分を売却するためにはどうすれば良いのでしょうか?主な方法としては以下の4つがあります。
① 共有名義の方に売却する
1つ目は、同じ不動産を所有している共有名義を持つ人へ、自分の所有部分を売却する方法です。価格の設定についてトラブルが起きる可能性があるため、実施する場合は不動産鑑定を受けると良いでしょう。国家資格を持つ不動産鑑定士が客観的な基準に基づいて鑑定してくれるため、適正な価格を知ることができます。
共有者が複数人存在する場合は、誰に売るかをしっかりと考えつつ、他の共有者とトラブルにならないよう事前によく話し合いをしておく必要があります。また、個人間売買にならないよう注意しましょう。
② 共有者全員で売却を行う
2つ目は、共有者全員で共有名義の不動産を売る方法です。不動産全体を売りに出すため、購入後「変更行為」や「管理行為」に伴い他の所有者の許可をとる必要がなく、相場価格で売ることができます。売却の契約時には、共有者全員の署名・捺印が必要となります。
③ 土地の分筆を行う
3つ目は、土地の分筆を行う方法です。分筆とは、登録簿上の土地の区画を変更し、複数に分けて登記する手続きのことであり、分筆を行いその土地を単独名義に変えれば、自分のみの単独所有となるため売却が楽になります。
ただし、分筆により土地の価値が下がったり、土地の形状が変わることで土地利用が不便になったりすることもあるため、分筆前に資産価値や売却相場を知っている不動産会社に相談するのがおすすめです。
④ 買い取り業者に売却する
4つ目は、買い取り業者に売却する方法です。買い取り専門の業者であれば、一般の買い手に売るよりスムーズに売却できる可能性が高く、一般の買い手がつきにくい土地でも買い取ってもらえます。
ただし、買い手がつきにくい土地は買い取り価格が低くなる傾向があるため、注意が必要です。
共有持分の売却時にかかる費用・税金
共有持分の売却時には、登記費用や税金、仲介手数料などがかかります。本章では、具体的な内容をご紹介します。
① 登記費用
共有持分を売却すると名義が変わるため、登記変更手続きが必要です。その際には、売渡証書を作成し、法務局へ提出します。売渡証書の作成は司法書士へ依頼することが多く、その場合は依頼費用もかかります。
登記の種類には所有権移転登記、所有権保存登記、抵当権設定登記があり、それぞれの相場は以下の通りです。
所有権移転登記:2万~12万円
所有権保存登記:1万~5万円
抵当権設定登記:2万~7万5千円
なお、抵当権を共有持分の不動産に付けている場合、抵当権抹消登記が必要であり、抹消する抵当権1件あたり1,000円の登録免許税が発生します。
② 譲渡所得税
不動産を売却し利益が発生した場合には、譲渡所得税(所得税、住民税および復興特別所得税)が発生します。譲渡所得税には「長期譲渡所得税」と「短期譲渡所得税」の2種類があり、それぞれ以下の通り税率が異なります。
長期譲渡所得税(不動産の保有期間が5年を超える):20.315%
短期譲渡所得税(不動産の保有期間が5年以内) :39.63%
どのくらいの売却益が発生しているか自分で計算するのは難しいため、税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。
③ 印紙税
共有持分の売却時に締結する契約書は課税文書であることから、契約書を作成する際には印紙税が発生します。売却価格が上がるほど税額も高くなります。
目安として、500万円以下の売却価格なら1,000円、1,000万円以下なら5,000円の印紙税がかかってきます。(売却額が1万円未満の場合は非課税)
④ 仲介手数料(不動産会社に依頼をした場合)
不動産会社に売却の仲介を依頼する場合は、仲介手数料を支払う必要があります。不動産会社によって異なりますが、宅地建物取引法では下記の通り上限が定められています。
このように手数料はかかりますが、早く確実に売りたいのであれば不動産会社に依頼したほうが良いでしょう。
共有持分に必要な書類
共有持分の売却には以下のような書類が必要となります。
・身分証明書
運転免許証など身分証明書に加え、登記簿の住所から転居している場合は、3カ月以内に発行された現住所の住民票も必要です。
・権利証
その不動産の正当な所有者であることを示す証明書のことです。共有持分を売却する際には、権利証または登記識別情報が必要です。
・印鑑登録証明書・印鑑
売買契約書の締結には実印が必要となるため、その実印にかかわる印鑑証明書も必要です。
・土地測量図・境界確認書
共有持分に土地が含まれている場合は、土地測量図や境界確認書も必要です。
共有持分の売却で発生しやすいトラブル
共有持分の売却は、単独名義の不動産売却に比べトラブルが発生しやすいため注意が必要です。主なトラブルとしては以下のものが挙げられます。
① 勝手に売却することで、わだかまりが生じる
勝手に不動産会社に売ってしまうと、売却した人以外の共有者は将来的に土地全体を売却しにくくなることから、買い取りをした不動産会社からその土地を買い取ろうとするインセンティブが高まります。
それにより、不動産会社側の立場が強くなり、高額な売値を提示される場合があることから、最初に売却した人とそれ以外の共有者の間でトラブルに発展しやすくなります。
後々トラブルが生じないよう、売却時は共有者にもあらかじめ伝えておくと良いでしょう。
② 売却価格でもめる
売り手は高く売りたい、買い手は安く買いたいと考えるため、価格でもめるケースがよくあります。売却価格を決める際は、不動産鑑定士といった専門的な立場にある人に査定をしてもらい、双方が納得できる価格を提示することが重要です。
③ 低価格での売却で贈与税が発生する
親しい間柄で不動産を共有している場合、無償、もしくは非常に安い価格で譲ろうとする人も少なくありません。しかし、相場とあまりにも乖離した価格で売却を行うと「贈与」扱いとなり、贈与税がかかる可能性があります。適正価格で売却するか、あらかじめ贈与税の発生を見込んでおく必要があります。
共有持分の売却時は不動産に相談を
共有持分の売却方法や注意点をご紹介しましたが、売却時は共有物全体を売却する方向性で考えると高値で確実に売れやすくなります。売却方法には色々なものがありますが、トラブルを回避するためにも不動産会社に相談することがおすすめです。
ZEUS INBESTは、事業用不動産の売買からリノベーションまでワンストップでサポートできる不動産仲介サービスです。正和工業が積み重ねてきた施工実績と、豊富な人材、培った技術力・ノウハウを活かし、お客様の多様化するニーズにお応えできる物件売買の仲介を実現いたします。
ZEUS INBESTのサービスの詳細につきましては、こちらの資料をご覧ください。
お役立ち資料
【倉庫・工場】売却前に読むべきガイドブック
このコラムを書いたライター
培った技術力・ノウハウを活かし、不動産仲介サービス「ZEUS INBEST」を通して物件に関する情報提供から管理・リノベーションまでサポートいたします。
コラムにて物件売買に役立つ様々な情報を紹介しています。