法人が保有する倉庫・工場を売却する際に
見落としがちな税金と費用を徹底解説

2025.12.08
法人が保有する倉庫・工場を売却する際は、税金だけでなく設備撤去費や解体費、環境対応費などのさまざまなコストがかかります。特に売却益は減価償却に左右されるため、資産状況の正確な把握が欠かせません。本記事では、売却時に見落としがちな税金・費用と、手取りを最大化するためのポイントを解説します。
目次
法人が倉庫・工場を売却する際に見落としがちな「税金」とは
非課税・課税の違いによる税務リスク
工場・倉庫売却前の判断が左右する税金・費用
売却時にかかる見えにくい費用
税金・費用を最小化するための準備とタイミング
売却価格だけでなく“実質手取り”を最大化するために必要な視点
倉庫・工場の売却は正和工業のZEUS INBESTにご相談ください

法人が倉庫・工場を売却する際に見落としがちな「税金」とは

倉庫や工場の売却では、土地・建物・設備といった複数の資産が混在しているため、税金計算も複雑になります。以下では資産の分類や課税対象となる税金の仕組み、減価償却の影響について解説します。

倉庫・工場は“土地+建物+設備”の複合資産

倉庫や工場は一つの資産に見えても、実際は「土地」「建物」「設備」という性質の異なる資産が混在する“複合資産”です。

 工場の場合、クレーン、搬送機、冷却設備、電気設備、架台、排水設備などの付属設備が存在し、土地・建物とは税金の計算ルールが異なるため、それぞれ分解して考える必要があります。

課税対象となる法人税・住民税・事業税の仕組み

法人では、売却した資産ごとに
売却価格−簿価(帳簿価額)=売却益
という計算を行い、この売却益が所得に加算されます。

簿価とは、取得した時の価格(取得原価)から毎年の減価償却の累計額を差し引いた残りの価値を指します。簿価が低いほど売却益が大きくなり、法人税・住民税・事業税の課税ベースである「課税所得」が増加し、税負担も高まります。

減価償却資産が多いほど利益計上リスクが高まる理由

工場や倉庫を売却する際、減価償却資産(建物・設備)が多いほど課税所得が増え、税負担が高くなる傾向があります。特に工場の設備は減価償却が早いため、売却益が大きくなりやすい点に注意が必要です。

土地は非課税、建物・設備は課税対象 ― 税務区分の注意点

倉庫・工場の売却では、消費税は土地が非課税である一方、法人税等は資産区分と簿価に基づき算定されるため、厳密な区分が必要です。売却益の計算がズレると税額にもズレが発生するため、帳簿価格(簿価)の正確な把握が必須です。

長期間使用される倉庫・工場では、修繕や増改築が行われていることが多く、建物と設備の簿価計上を分けて考える必要があります。例えば、増築や電気設備の増強工事が建物に含まれるか、設備として計上すべきかの判断が重要です。
これらが適切に整理・調整されていないと、本来設備として売却益が出る部分が建物扱いになり、逆に建物に乗せるべきものが土地に計上してしまうリスクがあります。

非課税・課税の違いによる税務リスク

工場・倉庫の売却では、土地は消費税非課税、建物・設備は課税という税務ルールが基本です。
ここでは、「どこに消費税がかかるのか」「どのようなズレが税務リスクを生むのか」を整理します。

土地は非課税、建物・設備は課税対象になるケース

工場・倉庫を売却する際、以下の課税区分を押さえておきましょう。

土地の譲渡は非課税ですが、建物や設備は課税対象であり、売却益は法人税の課税所得に含まれるため、土地と建物を区分して契約書に明記する必要があります。

消費税処理で発生する“想定外の支出”

契約書での区分が曖昧だと、税務署が設備割合を高めに評価し、消費税が増える場合があります。
「土地5,000万円/建物3,000万円/設備2,000万円」のように契約書で明確に区分記載することが重要です。

売却後に発生する精算費用と損金算入の落とし穴

売却後に請求される費用を損金計上し忘れると、税負担が増える原因になります。
【売却後に多い費用】
・固定資産税の清算
・未払費用(水道光熱費等)
・引き渡し条件を満たすための追加工事費

決算時に漏れやすいので注意が必要です。

工場・倉庫売却前の判断が左右する税金・費用

建物を残すか撤去するかで変わる税務と費用

撤去する場合:撤去費が発生しますが、建物簿価を除却損として損金算入でき、税負担軽減効果があります。
残す場合:除却損は計上できず、税負担軽減は限定的ですが撤去費は不要です。

用途変更(工場→倉庫・商業施設等)が与える税影響

用途変更によっては、以下が売却価格や税務に影響します。

・製造専用設備を残すと売却価値が下がる
・用途変更の改修費は資本的支出となる可能性が高く、即時経費にできない

老朽化した工場を売却する場合、用途変更して再活用するという選択肢も考えられます。用途変更は売却価格や税務に大きく影響するため、意思決定の際には注意が必要です。

リースバックで売却益平準化・事業継続する選択肢

リースバックは、売却後も同じ工場・倉庫を賃借して使い続ける方法です。
まずは工場・倉庫を売却し(売却益が出れば法人税課税)、次に同一物件を賃貸として借ります。その際、賃料は全額損金算入可能です。

売却益を平準化する手法(圧縮記帳)が使える場合があり、売却資金を確保しつつ事業継続が可能です。ただし、将来の再取得が難しくなる可能性があり、リース料負担の長期影響も考慮する必要があります。

売却時にかかる見えにくい費用

設備撤去・原状回復・インフラ整備にかかる費用

工場・倉庫を売却する際には、時に数百万円規模のクレーン・搬送設備などの撤去費や産業廃棄物処理費、上下水道、電力設備などのインフラ再整備費が発生します。
契約により「誰が負担するか」を明確にしないと、売主負担が膨らむリスクがあります。

土壌汚染・アスベスト・PCBなど環境対応費用

工場売却で特に費用が膨らみやすい項目として、土壌汚染調査と対策、アスベスト調査・除去、PCB含有機器の処理(法令に基づく処理義務)などの費用があります。
これらは専門業者の対応が必須であり、早期の調査とリスクの可視化が重要となります。

登記・権利関係整理で発生する手続き費用

売却までに抵当権抹消や地役権・借地権の整理、測量・境界確定などが必要であり、法務局や司法書士への依頼が必要となるため、手続きごとに登録免許税や専門家報酬が発生します。
特に敷地が広い場合、測量費用が高額化しやすい点に注意が必要です。

税金・費用を最小化するための準備とタイミング

簿価・資産区分・償却状況の棚卸

まず、固定資産台帳から次の3点を確認します。

・資産区分(土地/建物/設備)
・簿価(残存簿価)
・減価償却累計額

売却価格と簿価の差額が税負担に直結するため、事前整理は必須です。

売却スキーム別(直売却・リースバック等)の比較

工場・倉庫の売却では、スキームによって税負担や資金繰りが変わります。

・直売却:売却代金が一括で入りますが、売却益が大きいと法人税負担も大きくなります。
・リースバック:売却後も利用継続可能であり、賃料が損金となり税負担を平準化しやすい特徴があります。
・除却処分:売却せず解体して資産を除却する方法であり、未償却残高を損金算入できるため税負担の軽減が可能です。ただし、解体費の持ち出しは発生します。

利益計画やキャッシュフローの状況、建物や設備の残存簿価、解体が必要かなどをよく確認しましょう。

売却時期と固定資産税・償却資産税の調整

固定資産税は 「その年の1月1日時点の所有者」 に課税されます。設備や機械を含む売却では償却資産税も同様です。
実務的には、売却日を基準に日割り計算で負担を分けることが一般的です。これにより、売却時期の前後で不公平が生じないよう調整できます。

税制優遇・特別控除の活用

倉庫や工場の売却で生じる譲渡益に対する税金を抑える方法として、次の税制優遇が利用できます。

・事業用資産の買い替え特例
事業用資産を売却し、新たな事業用資産を取得する場合、譲渡益への課税を将来に繰り延べ可能な特例。売却益が多い場合は特に効果が大きいです。

・中小企業経営強化税制
中小企業が設備投資を行う際に、「即時償却」または「税額控除」のいずれかを選べる税制優遇措置。売却した資金を新設備投資に回す際に活用できます。

いずれも適用要件や届出期限があるため、早めに確認しておく必要があります。

専門家チームでシミュレーションする重要性

売却時には税金以外にも多くの付帯費用が発生します。ポイントは 「売却前にすべてのコストを見える化」することです。
例えば、工場を解体した上で売却する際には以下のような専門家チームを構成すると良いでしょう。

税負担・解体費用・環境対策費用等を事前に見積もることで、売却価格の交渉や資金計画に反映でき、予期せぬコスト増加を防止できます。

売却価格だけでなく“実質手取り”を最大化するために必要な視点

倉庫・工場売却では、税金や隠れた費用を差し引いた手取り額が重要です。
以下では、倉庫・工場を売却する際の“実質手取り”最大化の視点を解説します。

倉庫・工場売却は「資産戦略」

工場・倉庫を売却する際は、キャッシュフローや税務、設備処理、事業継続など複数の点から検討する必要があります。売却価格だけを見るのではなく、「総合的な資産戦略」として捉えることが重要です。

税金と見えにくいコストの管理が利益を決める

売却時の実際の手残りは、売却価格−(法人税+消費税+環境対応費+解体費+登記費用+仲介手数料)です。

売却額が高くても、環境対策費(PCB・土壌汚染)、解体費用、税金などで差し引かれ、手取りが増えないケースは少なくありません。単なる税金対策だけでなく、環境対応費用や撤去費用等も含めた事前のコスト見積もりが重要です。

早期準備と専門家連携が成功のカギ

固定資産税や譲渡益課税は売却時期によって負担が変わるため、売却スケジュールの設計が重要です。
専門家(税理士・不動産鑑定士・建築士・環境コンサルタント等)と連携し、隠れたリスクを事前に把握することで価格交渉を有利に進められ、予期せぬコスト増加を防止できます。

倉庫・工場の売却は正和工業のZEUS INBESTにご相談ください

倉庫・工場を売却する際には各種の税金が課され、土地・建物・設備によって課税の対象が異なるほか、減価償却に基づいた売却益の計算も必要です。また設備撤去費や解体費、環境対応費などの費用も発生するため、税額や費用を抑える工夫が求められます。
自社だけでコストの最適化が難しい場合、税理士をはじめとする信頼できる専門家に相談しましょう。より有利な条件での売却を実現できる不動産業者に相談することもおすすめです。

不動産仲介サービスの「ZEUS INBEST」は、倉庫や工場をはじめとする事業用不動産の高値売却をサポートします。総合建設業として長年実績を積み重ねており、多くの買い手企業様とのつながりがございます。売却前の物件に利便性・機能性などの付加価値を付与し、物件価値を向上させることが可能です。

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このコラムを書いたライター

編集者
正和工業マーケティングチーム
正和工業は、20,000件以上の施工実績を持つ総合建築企業です。
培った技術力・ノウハウを活かし、不動産仲介サービス「ZEUS INBEST」を通して物件に関する情報提供から管理・リノベーションまでサポートいたします。
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