貸し倉庫のよくあるトラブルとは?
回避方法も併せて解説
本記事では貸し倉庫のよくあるトラブルと、その回避方法を解説します。倉庫を貸し倉庫として活用したい方はぜひお読みください。
貸し倉庫のニーズが高まっている背景
近年、ECの拡大や企業のコスト削減の動きなどを受けて、貸し倉庫のニーズが高まっています。
貸手としては初期コストを抑えてローリスクで運営でき、使っていない倉庫を法人に貸し出すことで収益の確保や遊休資産の有効活用などのメリットを得られます。
貸し倉庫でよくあるトラブル
一方で、貸し倉庫を運営していると借主や近隣住民との間でトラブルが起こることも珍しくありません。
よくあるトラブルとしては以下の6つがあります。
近隣住民からの苦情
近隣住民からの苦情は、貸し倉庫で頻繁に発生するトラブルの一つです。
主に以下の要因が挙げられます。
・騒音
深夜・早朝の荷物搬入や搬出時のエンジン音、倉庫を工場として利用する場合の機械音などが騒音になることがあります。特に深夜・早朝の時間帯の騒音は睡眠を妨げるため、問題になりやすいです。
・振動
トラックによる荷物の搬入・搬出や機械の稼働による振動が、近隣住民の生活環境を悪化させる可能性があります。
・異臭
異臭も苦情の要因となり得ます。例えば塗装業者が倉庫を利用している場合、シンナー臭が周辺に漏れ、健康被害を引き起こす可能性があります。
このほか、倉庫利用者の違法駐車や交通渋滞の発生なども苦情の原因となります。
賃料の滞納
借主とのトラブルとしてよくあるのが賃料の滞納です。賃料の滞納が発生すると期待した収入が得られず、固定資産税をはじめ固定費の負担が大きくなります。
借主である法人の経営が悪化すると取引先への支払いが優先され、賃料は後回しになりやすいため滞納が発生しやすくなります。
原状回復をめぐるトラブル
原状回復とは、退去時に借りていた部屋や建物を借りた当初の状態にして返す決まりのことです。
借主が故意または過失によって建物に損害を与えた場合、原状回復に必要な費用を負担する必要がありますが、退去時に倉庫が汚損・破損していても、借主であるテナント側が修繕を拒否するケースがあります。
通常の使用による劣化かテナントの責任による損傷か、またそれに関連して原状回復費用をどちらが負担するかをめぐり、貸主・借主の間で意見が対立するケースもあります。
立ち退きの拒否
契約期間終了後も借主が倉庫を使用し続けているケースや、重大な契約違反や賃料の滞納のような事由が発生したために契約期間中に立ち退きを求めても、借主が納得しないケースがあります。
また立ち退きには納得しても、移転先が見つかっていないために移転できない状態になっていることもあります。
湿気・カビ・害虫等の被害
倉庫内の湿度が高いと、湿気そのものやカビによって保管している商品や資材が劣化することがあります。
また、ネズミやゴキブリなどの害獣・害虫による被害や、古い建物の場合は雨漏りによる商品・資材・機械等への被害も起こり得ます。
無断での転貸
テナントが貸主に無断で第三者に倉庫を転貸するケースもあります。
転貸された倉庫内で問題が発生すると貸主がトラブル対応を強いられるため、無断転貸は可能な限り避けなければなりません。
転貸を貸主が承諾していれば使い方を把握できますが、無断の場合は何に使っているのか把握できないことや把握が遅れることが発生するため、トラブルに発展しやすいです。
貸し倉庫でのトラブルの回避方法
貸主は上記のようなトラブルを避けるためにどうすれば良いのでしょうか。
トラブル回避のためにすべきことを解説します。
近隣住民の理解を得る
近隣からの苦情を最小限に抑えるために、貸し倉庫事業を展開する際には近隣住民に事前説明を行い、理解を得ることが重要です。
荷物の搬出入が可能な時間を設定する、防音設備を導入するなど、近隣住民への配慮を徹底していることを示すと良いでしょう。
契約段階で滞納の発生に備えておく
賃料の滞納に対処するためには、契約の段階で契約書に「一定期間の滞納で契約解除可能」と明記することが効果的です。加えて、契約時に保証金を設定すると未払い時のリスクを軽減できます。
テナントの信用調査や保証金の確実な徴収など、事前の対策も重要です。
また滞納が発生した場合には、速やかに連絡・督促等を行い、少しでも賃料を支払ってもらえるよう交渉しましょう。
契約時に原状回復の範囲を明確にしておく
原状回復をめぐるトラブルを回避するためには、契約時に「原状回復義務」を明確に定め、修繕範囲を明記しておくと良いでしょう。
入居時の状態を記録するため、写真や動画を撮影しておき、通常の使用による劣化とテナントの責任による損傷を明確に区別する必要もあります。
契約更新・退去条件等のルールを明確にしておく
契約時に「契約満了時の退去義務」を明確にし、必要に応じて違約金規定を設けておくと立ち退き拒否のトラブル防止に役立ちます。契約書に退去条件を明記しておくとともに、十分な退去予告期間を設けることがポイントです。
そのうえで、借主が立ち退きに納得しない場合には粘り強く説得する必要があります。それでも立ち退きに応じず、強制退去が必要な場合は法的手続きを進めるため、弁護士と連携することも選択肢に入ります。
倉庫の清掃・環境の管理を徹底する
湿気やカビによる被害を防ぐためには、定期的な換気や除湿を行うことが不可欠です。
また、清掃が行き届いていない不衛生な状態が続くと害虫・害獣被害が発生しやすくなるため、日ごろの清掃を徹底することに加え、必要に応じて駆除や防虫・防鼠対策を実施します。
建物が老朽化している場合は、速やかに雨漏り対策を行う必要もあります。
湿気やカビ、害虫などの被害を防ぐには、保管物の適切な管理方法を借主に指導することが重要です。
契約書に「転貸禁止」条項を明記する
転貸を防ぐためには、契約書に第三者への無断貸し出しを禁止する項目や、違反時の対応を明記することが効果的です。転貸を認める場合にも、貸主に用途や転貸先の情報などを事前に知らせ、許可を得る旨を明記すると良いでしょう。
いずれにしても定期的に倉庫を巡回し、不審な利用がないか確認するとともに、契約違反が発覚した場合は速やかに是正を求める必要があります。
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貸し倉庫事業を展開する際には、近隣住民の理解を得るとともに、契約書に賃料の滞納や原状回復、退去条件などの項目を明記し、借主に説明して理解を得たうえで貸し出すことが重要です。
契約の段階で責任の所在をはっきりとさせておくことで、仮にトラブルが発生したとしても交渉が難航するのを避けられます。
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