不動産M&Aとは?メリット・デメリットや
スキーム、税金を解説

2025.01.29
不動産M&Aは不動産取得を目的としたM&Aであり、売り手としては節税効果の高さ、買い手としては不動産取得費用の抑制などさまざまなメリットがあります。一方でデメリットもあり、通常の不動産売買とは異なるスキームで手続きを進めるため、実施する前に慎重に検討する必要があります。

本記事では不動産M&Aのメリット・デメリットやスキーム、税金などを解説します。不動産売買を検討している方や、不動産M&Aのメリット・デメリットを知りたい方はぜひお読みください。

不動産M&Aとは

不動産M&Aとは、企業が保有する不動産の取得を目的としたM&A(合併・買収)のことです。不動産の所有権そのものを直接移転するのではなく、不動産を所有している法人ごと譲渡します。

通常のM&Aでも不動産の取得が含まれることはありますが、あくまでも付随的なものでありメインの目的は法人の買収による事業の継承や拡大です。そのため、不動産の有無は必ずしも重要な要素ではありません。一方で、不動産M&Aでは不動産の取得がメインの目的であり、価値の高い不動産を複数持つ企業が主な対象となる傾向があります。

不動産M&Aのメリット

不動産M&Aには、売り手と買い手それぞれにメリットがあります。

売り手のメリット

売り手側のメリットは以下の2つです。

・節税効果が高い
売り手側の最大のメリットは、通常の不動産売却と比較して大きな節税効果が期待できる点です。
通常の不動産売却では、売却利益に対して約40%の法人税が課され、さらに残額に対して所得税が課される可能性があります。一方、不動産M&Aでは株式譲渡として扱われるため、譲渡益に対して20.315%の所得税・住民税のみが課税されます。
事例によって課税額は変わるものの、税負担を半分程度に抑えられることも珍しくありません。

・廃業コストの削減になる
事業承継と組み合わせることで廃業コストを削減できるメリットもあります。
通常の廃業では、設備や在庫の処分費用、店舗などの原状回復費など、多額の廃業コストが発生します。一方で、不動産M&Aでは事業全体を第三者に引き継ぐことができるため、これらの廃業コストの負担を避けることができます。

買い手のメリット

買い手のメリットとしては以下の2つがあります。

・不動産取得費用が割安になる
通常の不動産取得では、取得税や印紙税、登記費用などの諸費用が発生しますが、不動産M&Aではそうしたコストがかかりません。そのため、全体的な取得費用を抑えることができます。

・市場に出回らない不動産を取得できる
企業が保有する不動産は、売買目的でない限り市場に出回りにくい性質があります。不動産M&Aであれば、そうした市場に出回らない魅力的な不動産を見つけ、取得できる可能性が高まります。
特に投資価値の高い不動産や、好条件の立地にある物件などを獲得できる機会が増えることがメリットです。

不動産M&Aのデメリット

不動産M&Aは売り手、買い手それぞれにデメリットもあります。

売り手のデメリット

売り手側のデメリットは以下の2つです。

・買い手を見つけるのが難しい
現在の日本のM&A市場は売り手市場であり、不動産取得を目的とした企業買収に興味を持つ買い手は限られています。また、守秘性を維持しながら取引を進める必要があるため、広く買い手を募ることが難しいこともデメリットです。

・成約までに時間と手間がかかる
一般的な不動産売買が3〜6か月程度で完了するのに対し、不動産M&Aでは成約まで1年程度かかるケースも珍しくありません。M&Aの成功率は3割程度であり、そもそも契約がうまくいかないリスクも考慮する必要があります。

買い手のデメリット

一方で、買い手側のデメリットには以下の2つがあります。

・売り手企業のリスクを引き受けなければならない
不動産M&Aでは、買い手は不動産だけでなく企業全体を取得することになるため、売り手企業のさまざまなリスクを引き受けなければなりません。例えば、売り手企業の潜在的な債務や法的問題などを引き継ぐケースが考えられるほか、従業員の雇用や取引先との関係など、経営上の課題を引き継ぐ場合もあります。

・デューデリジェンスの費用がかかる
不動産M&Aでは、対象企業の詳細な調査(デューデリジェンス)が不可欠であり、これには多額の費用がかかります。取引規模が大きくなるほど高額になる傾向があり、あらかじめデューデリジェンスの費用を見込んでおく必要があります。

ここまで不動産M&Aのメリット・デメリットを解説しましたが、実際にどのような方法で行うのでしょうか。次章でスキームを紹介します。

不動産M&Aのスキーム

不動差M&Aで用いられるスキームには主に以下の2つがあります。

株式譲渡

売り手企業の全株式を買い手企業が取得し、完全子会社化する手法です。買い手企業は子会社を通じて間接的に不動産を保有することになります。
不動産以外の事業価値が低い場合、買収後に不動産を自社へ移転し、売却側企業を解散します。一方で、経営統合の価値があると判断された場合には、子会社として存続させることが一般的です。

会社分割

売り手が新たに不動産のみを所有する子会社を設立し、買い手が分割された子会社の株式を買う手法です。
会社分割のメリットとして、組織再編税制の特例措置を受けられる可能性があります。また、必要な不動産をピンポイントで買い手企業に移転できる点が株式譲渡とは異なります。

両スキームとも、通常の不動産売買と比較して高い節税効果が得られることが大きな特徴です。

不動産M&Aにかかる税金

不動産M&Aは節税効果を得られるものの、税負担が完全になくなるわけではありません。
株式譲渡、会社分割それぞれにおいて以下のような税金がかかる場合があります。

株式譲渡の場合

株式譲渡では買い手への課税はなく、売り手に税金が課せられます。これは株主の譲渡所得に対する課税であり、税率は申告分離課税の20%です。
ただし、後に買い手が不動産売却を行った場合、売却利益で得る譲渡益に対する法人税や所得税が課せられます。

会社分割の場合

組織再編税制の適格要件を満たす場合は売り手、買い手ともに課税されませんが、適格要件を満たさない場合は売り手、買い手ともに税金が課せられます。
売り手には継承される資産や負債の損益に対する法人税、買い手には対価が株主に交付される場合の株主への配当所得に対する所得税が課せられます。

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不動産M&Aは、通常の不動産売買と比較して税制面で有利であり、大規模な不動産取引や事業再編において注目される手法といえます。
ただし、契約成立までの手続きや税務処理が複雑であるため、不動産売買のノウハウが豊富な専門家のアドバイスを受けながら進めることが望ましいでしょう。

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正和工業マーケティングチーム
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